2021年1月31日日曜日

サンツアー 古いリアディレイラーの整備

当店ではよくある古いRDの分解整備についてご紹介です。今回良い状態の80年代前半のスポルティーフに整備入庫していただきました。

で、RDのみ写真に撮っていたのでその詳細です。他はinstagramにちょこちょこ写真を流しましたので、ご覧頂いている方は「ああ、あれか」と思っていただければと思います。


ビフォーアフターでこんな感じです。錆が若干出て古い油脂類がこびりついているだけでそこまで異常
のない個体です。ばらして錆と古いグリスとスラッジを落としてグリスアップして組み直し。特に何の変哲もない作業ですが今回は900円くらいいただきます。(価格は状態によって変わります。今回はかなり状態がよく補修パーツも不要)

ものはサンツアー α5000です。1982年くらいのサイクロン7000(シマノ600対抗馬)のひとつ下のグレードです。

ちなみに、浸透潤滑剤をかけて置いておくといい具合に動き出したので、本来は分解したくない(古いものは分解すること自体が割とリスクなので)のですが、プーリーの清掃とグリスアップのためディレイラーケージのテンショナーは分解します。

分解しました。ケージの錆が酷いのと、スラッジで汚れている以外の異常はありません。ハンガー部のピボットとケージピボットはバネでテンションがかかっているので分解は楽でも組立が割と面倒です。捻ってテンションをかけた状態でパーツを組み付けてネジを通してスナップリングで留めるという、手が4本くらいほしい作業ですが一人で粛々とやらねばなりません。

しかし、この時代のディレイラーのケージ部はテンションを保つためのポッチがネジなので、組み付けた後でケージを回してテンションをかけてこのプラスネジをつければ完成なので楽々です。
ケージのサビ落としにも外したほうが楽な部位です。

ハンガー部はこのアルミの出っ張りでテンションを保っているので、バネを捻ってテンションをかけた状態でネジを入れて(このネジはフレームのハンガーに固定するネジなので、多くの機種でこの部分には差し込むだけです)さらに右の写真のスナップリングで止めます。バネの撚る角度を間違えるとテンションがおかしくなったりするので大変めんどくさい部分です。回転に異常がなければまず開けたくないところです。

いきなりですがきれいになりました。あとはグリスアップして組付けて完成です。なおこの時代のサンツアーはロゴの印刷が弱いのでディグリーザーの種類と使用方法には気を遣います。何も考えずに拭くと綺麗サッパリロゴが消えます。

小さくて見づらいですが、サンツアーロゴの下のラインに調整ネジのHとLの表記が白抜きで表現されていてハイセンスです。良いデザイナーの仕事でしょう!

プーリーとベアリングは概ね現代の8速用で代替できます。(今回はそのまま使います)
ベアリングの幅さえあっていればほとんど問題ありません。幅が合わないと回らないのでダメです。この時代のプーリーの歯数は10Tで、現代のシマノのものは奇数の9か11Tで若干違いますが使えます。(現代のシマノが奇数の理由はチェーンのアウターとインナープレートが交互に当たって偏摩耗を防ぐため)
新しいプーリーの幅が狭すぎたときは、プーリーにテフロン板を切って作ったスペーサーを挟んで、古い幅の広いベアリングがはまるように対処します。かなり前につくりましたが写真がありませんでした。

なおベアリング、webの自転車界隈だと「ボールベアリング」をベアリングと呼称する妙な風習が定着していますが、本来は英語のbearが語源で「耐えるもの」「保持するもの」という意味で、軸受として軸荷重に耐えて支えるものをベアリングと呼びます。この写真の金属の円筒みたいなものもベアリングです。プレーンベアリングという種類です(スリーブって呼んでもいいですけど意味合いが異なってくる)。テストに出ますのでしっかり覚えてください。

シマノ600のブレーキ。RDは撮っていなかった

なお、だいぶ前にシマノ600(アルテグラの名前がつく前)の分解をしたときは、プレーンベアリングがセラミックス製でしかもグリススリーブが設けられた、現代のものと設計的にはほぼ同等のものでした。

サンツアーのシマノ対抗馬、サイクロン7000はこのα5000と同じ設計だったのでシマノの方がサンツアーより一歩上の感があります。

当店レストアのパナレーサーとサイクロン7000

こちらのパナレーサー(LOOKのステッカーですがパナです)、いろいろ訳ありのためオンラインストアでの販売は予定しておりません。が、お問い合わせいただけましたらできる限りの対応はさせていただきます。

サイクロン7000、型番が7なのはシマノの600に対抗してらしいですけど、そういうとこだぞサンツアー。


というわけで、車体に組付けた後の写真を例によって撮り忘れていましたが古いRDも整備すれば問題なく使えます。

ドライブトレインは自転車の顔、RDを現代のものにしてしまうと一気に雰囲気が変わってしまいます。オールドスクールな自転車を現代でも現役で使い倒したい方は、安全性に問題がなければオーバーホールして使い続けることをおすすめします。

もちろん現代のもののほうが高性能ですが、こういう部品を温存して使いたいのはそもそも高性能を追求する自転車ではないと思います。

使えるかどうかわからない部品、お見積は無料ですので、もう一度乗りたいという方は是非一度ご相談ください!

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